女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~
楠本の結婚式は、桜の花びら舞う中で行われた。
元々美形のあいつがタキシードを着ると、まるで映画の中の宮廷人みたいな雰囲気になった(って私はホンモノの宮廷人を見たことなんてないけれど)。
弘美と二人でその楠本を見てげらげらと笑い転げる。
「・・・・・俺、笑われたの初めてだ」
憮然として口元を歪める極上の花婿を見て、私たちは更に笑い声を大きくする。
手をヒラヒラと振って笑いながら言った。
「今日はアンタが主役じゃないでしょーが。千尋ちゃんを見にきたのよ。それなのに王様みたいにふんぞり返って居るからさあ~」
バカみたいにぎゃはははと笑って、周囲から顰蹙を買った私たちだった。
彼女の趣味で統一されたらしい教会の内装は、ロマンチックかつシンプルで全てが優しい雰囲気だった。
生花のいい香りに包まれたバージンロードをAラインのウェディングドレスに身を包んだ彼女が歩くのは、見ごたえがあって思わず歓声が上がる。
私より身長が高いことがイメージと違ったけど(なんせトマトでしょ)、楠本と並ぶと綺麗で完成されたカップルだった。黒くて長い髪が白い肌と赤く染まった頬に映える。
彼女の大きな瞳は澄んだ光りをたたえて、祭壇で待つ楠本をまっすぐに見詰めている。
「・・・美しいって言葉が似合うわねー、この二人」
隣で弘美が呟いた。私は頷く。白雪姫と王子様って、こんな感じだったんじゃないかしら・・・。どこから見ても絵になる完璧なカップルで、口をあけっぱなしにして見ている参列者が多かった。