女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~
まるで絵本みたいな美しすぎる式を終えて、現実感が戻ってこないままガーデンパーティーに突入した。
ワイングラスを片手に持って、色んな知り合いと談笑する。楽しい。大学の友達もそれなりに来ていて、みんな31歳の姿形になっていてそれをお互い笑い合う。
「まりと楠本は変わらないな」
ってのが一致した意見で驚いた。・・・・でも何か、成長してないって言われてるみたいだぞ。
ふん、と私が膨れていると、友達連中から解放されたばかりらしい花嫁が目の前を通りかかった。おーっと、捕まえないと!別嬪が前にいるぞ!
「千尋ちゃん、おめでとう!!」
酔った勢いもあって、いきなり声をかけると、彼女は驚いて小さく飛び上がった。
見る見るうちに赤くなる。・・・・・あら~、可愛い。私は思わずそれをじっと観察する。彼女は慌てた様子で両手を絡み合わせながら、べらべらと喋りだした。
「・・・ああっ・・・すみません!あのあの、ただ驚いてしまって・・・だってもう、うち・・でなくて私・・・あれ?わああ・・何言ってんだろ・・・」
くくくくと思わず笑ってしまう。私は笑いながら、何とか言葉を出した。
「ごめんね、こちらこそ。そしていつかの電話でいきなり怒鳴ったのも、本当にすみません。小川です。本日はお招きありがとうございます。とても素敵なお式でした」
無事に結婚して戸籍上は桑谷まりになった私だけど、仕事の関係もあってプライベートでは未だに小川まりで通している。
百貨店では通りすがりに色々な人が祝福してくれて、結婚を公表した日は色んなメーカーさんから頂き物を山のように貰ったんだった。