女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~


 私の話は止まない。彼は窓の外に視線を向けたまま。

 私が話を止めて尋ねる。どうしたの、と。

 彼は何も言わず、視線は窓の外のままでゆっくりと立ち上がった。

 そして呟いた。

 「・・・・行かなきゃ・・・」


 ―――――え?どこへ?


 そう口に出したところで目が覚めた。


 目を開けて、荒い呼吸のままで暗い天井を見詰めていた。

 ・・・・夢だ。何だろう。悪夢だったとは言い切れない。だけど・・・このざわざわする心は。

 ごろりと横向きに転がって、汗をかいていた額をぬぐう。そして、携帯がライトを光らせているのに気付いた。携帯をあけるとメールの着信。

「・・・・何てこと」

 私の声が一人の部屋の暗闇へ吸い込まれて消える。

 メールは彼からで、こう書いてあった。

『夜遅くすまない。少し立て込んでいる。君の部屋には当分行けそうにない。2日間、仕事も休む。また連絡する』

 受信時間は深夜3時少し前。

 夢とダブった。

 箇条書きのメールをもう一度読み直して携帯を閉じる。

 ・・・何かが起きたんだ。責任者が仕事を休むくらいのことが。

 そして、彼は行ってしまった。

 私に何も言わずに。



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