女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~
明日・・・いや、今日も、俺は仕事帰りに調査会社にいかなくてはならないのに。ちゃんと対策が出来るまで、彼女に近づけないのに。彼女を守るために、出来るだけのことは先にしようと思っていた。
簡単に計算しても、どれだけ急いでも、3日はかかる。今の細川の状態の調査と、仕返しをする気が本当にあるのかどうかの見極め、それが判れば盗聴などの手配もしなくてはならない。
明日職場にいったら、何とかシフトを調整して休みをもぎ取るつもりだった。幸いにも大学生の試験期間はちゃんと終了したようだし。
「・・・・畜生、細川のくそったれ・・・」
ごろんとまた転がった。
窓の外はまだまだ元気な繁華街の明り。うー・・・と唸って瞼を強くもんだ。
彼女は賢い。それに、鋭い。何とか巻き込まずにこの騒動を終わらせるために今の内に休みをもぎ取って懸命に頑張る必要がある。
細川は元ストーカー。彼女の存在を知られると、あらゆる意味でやばいことはハッキリしている。彼女は俺のアキレス腱だ、厳重に守らなければ。自分を許せなくなることはしたくない。
彼女が巻き込まれると―――――更にややこしくなる可能性は大だ。あのお転婆は首を突っ込んで、かき回すに違いない。そんなしんどいことは本気で御免だ。
今が百貨店の閑散期で助かった・・・。繁忙期だったら当然無理だ。責任者がいきなり休めない。
彼女にはしばらく会えない。
だから、あの綺麗な笑顔も見れないし、あの体も味わえない。
「・・・・全く・・・」
呟いた声はしわがれて、埃っぽい天井に上っていく。
「勘弁してくれ・・・」
自然に寝るのは諦めて、起き上がった。
酒が要る。その力を借りて、眠ることにしよう。
コロナビールを取り出した。
桑谷目線の場面切り取り番外編 終わり。