女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~


 翌日もその翌日も、本当に桑谷さんは休んでいた。

 すれ違う鮮魚の社員さんが、「あれ、一緒じゃなかったの?」と声をかけていく。

 皆、私と旅行かなんかに行ったのだろうと思っていたみたいだった。ってことは、彼はちゃんと理由を言わずに休暇を取ったってことか。

 私は一々微笑みながら会釈を繰り返し、適当にはぐらかしていく。

 そして、胸の中では暴言の雨嵐だった。

 くっそおおおおおお~!何してんだよあの男は!大の大人が理由も言わずに仕事を二日も休むなっつーの!!それでもお前は責任者かよ!!って。

 笑顔で接客をし、いつもどおりに業務をこなしていたが、休憩時間には携帯のチェックを欠かさなかった。

 ただし、2日間で彼から来たメールは1通のみ。

 「防犯には気をつけること」

 って、まるで幼稚園の子供に言い聞かせるような文章のものだった。

 生理前なのもあって、私のイライラは究極に溜まっていた。部屋でビールを飲み、缶を潰してゴミ箱に投げ入れて発散する。

 ・・・私、一応婚約者なんだけど。

 それともそう思ってただけで違ったのかな。

 説明とか、言い訳とか、何でもいいけどあるべきじゃない?

 一体どこで何してんのよおおお~・・・・。

 彼は探すプロでも私は一般人、彼がどこにいるかなんて勿論知らない。興味がないから彼の部屋の合鍵は貰ってないし、やつの部屋で帰りを待つことも出来ないのだ。


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