女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~
ムカつくから「どこにいるの」なんてメールはまだ送ってない。
信頼しているなんて甘ったるい言葉は吐かない。ただ単に、あちらからくれなかった情報をお願いして聞くのが嫌だっただけだ。
明日には出勤するだろうから、百貨店で聞けばいい。
5本目のビール缶を両手で潰してゴミ箱に投げ入れた。完全に、ただの酔っ払いだった。
化粧も取らずにごしごしと手で目元をこすったので、アイラインとマスカラが取れて目に入り、沁みて涙が出る。
「・・・・あーあ・・・」
複雑な過去を背負った男を好きになった、これが代償か、と思った。
カーペットに転がした携帯を恨めしく見詰める。
すきっ腹に入れたビールが不快感を増して私を責める。
ため息をついて立ち上がり、お風呂の支度をしに行った。
夜の1時半。
盛大なイライラと不快感、それに単純な欲求に負けてついにメールをしてしまった。
『何してるの?明日は会える?』
文章を打ったそのままで、転がって、暗い天井を見詰めていた。
30分後、彼からの返信。
『仕事は行く。まだ時間が取れない。申し訳ない』
・・・・・・・・・マジで、ムカついた。