女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~
『ハロー、まりっぺ。珍しいじゃん、どうしたの?』
ハイテンションで電話に出た彼女の声にほっとする。
大学の時の同級生で、海外旅行にもよく一緒に行った彼女の名前は高木弘美。独身、私以上に毒舌、家で雑誌の記事を書いて生計を立てている、ライターだ。
「婚約者とすれ違ってイライラしてるの。助けて」
端的に述べると、あはははと明るい笑い声が響いた。
『あんたが生意気にも婚約者なんか作るからでしょうが!さっさと結婚しないからこうなるのよ。今頃彼は他の女と宜しくやってるに決まってる』
・・・・・生意気。そうなのね、やっぱり私が婚約者なんて作ると友達はそう思うのね・・・としみじみ感じた。しかしどうなの、このセリフ。一応あんた友達でしょ?私は苦笑して額を掻く。
「・・・・慰めの言葉、ありがとう」
他の女と宜しく・・・つい、こっちも笑ってしまった。
『いいわよ、可哀想なあんたに付き合ってあげる。ご飯行こうよ、ここ最近まともなご飯食べてないのよ』
さらりと心配になる言葉を返してきてぎょっとしたけど、取り合えずとランチの約束をした。
女の子と出かけるのは久しぶりだ。ささっと、だけど手抜きではないメイクをして、少し明るくなった気分で出かけた。
「あらまあ、ちょっと見ない内にあんた色っぽくなって~」
黄色い声を上げて手を振る弘美を見つけて駆け寄る。
「色っぽくなった?そお?」
抱きついたあと思わず聞くと、うんうんと頷いた。
「セックスライフが充実してるのね。前の、美形の彼氏ではないんでしょう、今の婚約者は?」