女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~
「・・・・窓、開けたまま寝てたのか?」
むっつりとした声だった。彼は怒ると、第一段階でこういう声を出す。前職の影響やらこの夏までの私の環境を考慮して、防犯には口うるさい男なのだ。
にっこり笑った私を見て、更に機嫌が悪そうな顔と声で続けた。
「――――――裸で」
タオルケットを挟む形で出した足も、勿論見えている。
「・・・裸じゃないわよ」
私は言った。本日の第二声で、寝起きの掠れた声が出た。
「下着はつけてるもの」
・・・ただし、紐パンツだけど。と心の中で付け足した。片足を完全に出しているので、彼もそれには気付いているはずだ。
昨夜は職場である百貨店のイベント前の準備で遅くなるから自分の部屋に帰ると聞いていたので、今朝こうなることは予想していた。朝に彼が私に会いにくるってことは。
私が微笑んだままじっと見ていると、彼はため息をついて立ち上がり、窓を閉めた。
「・・・・覗かれたらどうするんだ?」
まだ怒った声だった。
「大丈夫よ」
私はタオルケットの中でうつ伏せになる。そうすると、鍛えている自慢の背中がよく見えるはずだ。
十分に彼の視線を楽しんでから、言った。
「・・・・20分前に開けたばかりだから」