女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~
私の男友達に楠本孝明というかなりのイケメンがいる。
ヤツが大学卒業後に保険会社に就職して営業をしているまでは知っていたが、ここ5年ほどは全く交流がなかった。
斎とはまた違った外見の良さで、斎が可愛い洋風系の美形なら、楠本は端正な和風系の美形だ。
切れ長の目に形のいい鼻と口元を持っていた。笑うと印象が変わってやんちゃな顔になるところも魅力だった。
頭脳明晰で九州男児のような男気があって背も高く、しかもえらく顔もいいので、いつでも大変な人気ぶりだった。あいつと一緒にいるだけで嫉妬の嵐に巻き込まれたりした迷惑な記憶もあるし、行く先々でサービスが良くなったりの数々の恩恵に浴した事もある。
本人は目立つ整いすぎた外見を嫌がってるところがあったのが、斎とはまた違うところか。斎は、いつでもそれを利用したものだが。
「2年付き合ってる年下の彼女と、ついに結婚するって聞いたよ~」
弘美がニヤニヤしながら言う。同窓会の幹事なんかをよくやっていた弘美は、友達の現在の情報をよく知っている。
「・・・へえ、ついに。でもアイツがいい女と出会えてよかった」
しみじみと本心から言った。
端整な外見が災いして、昔から厄介ごとに巻き込まれることの多い男だったのを知っている。女達からのアプローチから逃げる為に、私が仕方なく彼女役をしたこともある。
ところがいつでも一緒に居た私との間に恋愛感情は一切わかず、それはそれでお互いに苦笑したものだった。
「お前に恋愛感情を持てたら、きっと一番楽なのにな」
って、ヤツも言っていたくらいだ。
よく二人でオールナイトで飲み、バッティングセンターやゲームセンターをはしごしたものだ。