女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~


「あんたにも案内状が行くと思うよ。ちょっと前に電話がきて、あんたの住所聞いてきたから」

「楠本が?」

 弘美がにっこりと笑った。私も嬉しい気持ちになる。やつの新妻をぜひ見にいかなくちゃ、と二人で盛り上がった。

 そして、次は夜のみに行こうと約束して、午後4時に、ようやく忙しい彼女を解放した。


 夜、相変わらず連絡のない携帯を見詰めて、一人で頷いた。

 弘美のいう事は正しい。

 私はちゃんと問いただすべきなんだろう。何も教えてくれないからと、ここで彼を見捨てないで。

 彼と直で話さなくて、既に5日が経っていた。

 もう十分だ。

 明日、彼が出勤かどうか知らない。でも居たら。売り場に、あの人を見つけたら。

 何としてでも捕まえてみせる。

 あのヤロー、私をなめんなよ。私はなんせ、しつこい女なんだぞ。

 こぶしを固めて半月の月を睨んだ。

 そして玄関の鍵2個を施錠を確認し、チェーンも閉めて寝る支度をした。 


 翌日。

 私は早番で9時に出勤だったけど、彼も同じく早番だったらしく、店員口横の名札は私がひっくり返す時には既に彼の分は出勤となっていた。

 鮮魚や惣菜は出勤が早い。

 開店準備に時間がかかるので、早番でも出勤時間は1時間半は違ってくる。

 私は名札を見て、今日こそはと決心を固めた。

 いざ、出陣、の思いで売り場に向かう。

 メーカーの制服を着ると気持ちも引き締まった。


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