女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~
2、我慢なんてしない
午前中、売り場から振り返ると、鮮魚で働く彼が見えた。
昨日は私が休みで一日弘美といたし、その前日は無視していて、その前2日間は彼が居なかったから、姿を見るのも久しぶりだった。
その事実に、実はうんざりした。
福田店長が私の様子に気付き心配そうにしていたけど、瑣末なことですので、とかわしす。
彼が一度もこっちを見ないのは、不自然だった。
・・・・あのヤロー、私を避けてる・・・。
お昼の休憩でも会えなかったのは、わざわざ無視しているとしか思えない。
と、いうことで仕方なく(というには嬉々として、だけど)、私は強行突破に出た。
逃げられない道に追い詰めることにしたのだ。
つまり、売り場に出向いた。
休憩が終わり売り場に向かう途中、デパ地下の店員入口を入って一礼をしてから、自分の売り場に戻るのではなく、鮮魚売り場を目指した。
丁度、厨房ではなく、売り場に出て手を叩いて客寄せをしている彼を発見した。
その人めがけて真っ直ぐに歩いていく。
大きなよく通る声で、刺身のパックを並べながら本日のお勧めを紹介する彼の横に黙って立った。
「どうぞ、ご利用―――――」
客だと思って体を横に避け、顔を上げた彼が私に気付いた。
「――――――」
口を開けたまま一瞬固まった彼を、私は無表情で見詰めた。