女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~
「では、フルネームで」
この人若いのに、熨斗つけたりするのに慣れてるのかしら、と若干不思議に思った。躊躇なく答えたな。
ま、若く見えるだけかもだけど。待っている間デパ地下を見回しているらしい客をそっと盗み見る。
28・・・もしかしたら30歳越えてるのかな?いやでも、25歳でも通るかもね、この外見だと。
年若いお客様の中には熨斗が何かを知らない方も多くいる。何でもはいと答えとけばいいや~的なノリで販売員の質問に答え、紅白か黄白か、とこちらに聞かれて初めて「熨斗ってなんですか」と質問がくるのだ。
で、散々販売員に説明させておいて、やっぱり包装だけでいいです、となるのが普通。
仕方がないことではあるし、説明は勿論させて頂くが、忙しい時にはイラっとなるのも事実。判らないなら判らないと最初っから言えっつーの。
全ての記入を終え、会計を済ませる。そして竹中さんと二人で並んでカウンター前で頭を下げて見送った。
「やったー、3千円ですね~!一歩ずつでも売っていかないと、今日の予算高いですもんね~」
喜ぶ竹中さんに、頷いて、今売ったばかりの商品の品だしと熨斗を作りに言ってきますと声をかけた。
・・・有難いぜ、3千円。
デパ地下では熨斗の出番が多い上に必要枚数が多いこともあって、一々筆耕さんには書いてもらわない。
パソコンで印刷するのだ。
そしてそのパソコンは、閑散期のくせに最近調子が悪く、たびたび壊れていた(パソコンソフトがのし太郎と言うので、販売員は『太郎君の機嫌が悪い』などと言ったりする)。