女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~


 自分の休憩時間になると、バックヤードに入るや否や桑谷さんに電話をかけた。

 しかし間の悪い時というのはあるもので、彼の携帯からの応答は「現在電波の届かない場所にいるか、電源が入ってません」というアナウンスだった。

 もしかしたら、彼はストーカー野郎について調べたりで動いてるのかもしれない。

「あ」

 そういえば、あの手紙の事をまだ言ってなかった、とその時に気付いた。2日間もあったのにいいいいいい~!ハリセンがあれば、自分の頭を殴りたい。

 ・・・・・今朝だったら、きっとメールも通じたんだろう・・・。あああああ・・・前振りだけでも、しとくべきだったわ、バカな私。言うだけでも言っていたら、彼は私から離れたりしなかっただろうし、携帯もすぐに通じたはず。

 この夏は4回も死に掛けたのに、やはりバカはバカのままなのね。そして私はバカなのね。凹んで、店員食堂のテーブルに突っ伏す。

 気持ちの悪い電話・・・。でも、何かがあった。私あの時、何かを感じた。

 ちりちりと音を立てて、自分の記憶が何か言っていた。

 ううーん・・・と考え込んだけど、一体何に反応したのかが判らない。

 ため息をついて、とりあえずとお弁当を開いたけど、食欲はなくなってしまっていた。

 職場に電話まで・・・。部屋はもうバレてるわけだし、今日は遅番で、帰りは暗い。

 昨日から11月に入って、風もいきなり冷たくなったし、帰りは勿論真っ暗だ。


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