女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~
証明書を出して通用口を通る。しばらくは明るい道だし、怖くもなんともない。
後ろからいきなりナイフで刺されるとかでなければ、どうにでも出来るだろう。
・・・ナイフ・・・から連想して、斎のバカに神社でナイフを突きつけられたことを思い出した。畜生、あのバカ男。記憶からは中々消えてくれそうにない。
イライラしながら早足で歩いていたら、すぐにアパートについてしまった。
周囲を確認してから郵便受けを見ずに開けて、中のものを取り出し、ダッシュで自分の部屋に入った。
鍵を二個かけてチェーンもかけて、やっと一息つく。
「・・・はあ。無事、到着」
まったく・・・と思いながら、居間に行く。いつものように郵便物をテーブルに投げて・・・そこで、気がついた。
また、夕刊の間に白い封筒を見つけた。
「小川まりさん。
今日は電話で話せてよかった。
君は美人だけど、声もいいんだね。
好きになってしまいそうだよ。
細川」
前回と同じ罫線のない白い紙に、ただ、書いてあった。ただし、今度は名前入り。
これと前のヤツを警察に持っていっても、何の罪にもならないことは判ってる。
斎の事件でお世話になった生田刑事にでも相談だけしてみる?と考えて、それよりも何よりも、桑谷さんだわ、と思ってもう一度携帯にかけてみた。
次は電波は通じたけど、いつまで経っても応答はなかった。
クッションに携帯を投げて膨れる。
・・・・必要な時にいてくれなきゃ意味ないじゃん。