女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~

2、バカ野郎の告げ口



 翌日の火曜日とその次の水曜日、何と私は久しぶりの連休だった。

 無事に家に戻れたし、ふてくされていたので携帯は台所の引き出しにしまっていた。

 勿論、連絡の取れない彼への地味な当て付けだ。

 自分の部屋にいるし、昼間は恐怖なんてかけらもなく窓を全開で掃除をしたり洗濯をしたりして、まだ明るい内に買い物も済ませた。

 あっちは私の事を知っているし、ふいをつかれて襲われる心配がないうちは、いつも通りにするしかないと思っていた。

 今日は桑谷さんは出勤のハズだけど、朝来ていた「おはよう」のメールは無視した。月曜日に連絡を取ろうと躍起になっていた情熱がさめた反動で、彼にメールをするのでさえ面倒臭かったのだ。

 それに、水曜日が楽しみだったのもある。その興奮で嫌なことは頭から追い払っておきたかったのだ。

 いよいよ明日、楠本に会える。

 夜、「友達と飲むから今日は来ないで~」と軽いメールを送っておいて、桑谷さんを遠ざけた。今日は昔の私に浸りたかったのだ。

 そしてストーカーのことも忘れ、ゆっくりとお風呂に入ったり、弘美と電話したりした。大学生の時の話をたくさんして笑い転げる。

 とても寛いで、幸せに眠りについた。



 待ちに待った、水曜日が来た。

 アイツとは昼に約束している。準備万端で軽く化粧をして気取らない格好で待っていた。楠本相手にお洒落をする気はないけれど、それなりにしないと肌の老化が目立つ年頃でもあるのだ。

 朝からいい天気の一日で、11月に入ったけど、風も温かく、窓を開けていてもちっとも寒くなかった。

 午後1時過ぎ、ピンポーンとチャイムが鳴った。


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