女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~
第4章 応対
1、鳥かごの中の私
11月に入って、桑谷さんは私の部屋に完全に移住してきた。
そして出来る限りシフトをあわせ、行き帰りの時間もあわせるようにした。
楠本が帰った後、10分くらいで戻ってきた桑谷さんは、楠本が帰ったと聞くと、真剣な顔して私に言った。
「凄く綺麗な顔してたなー。失礼だとは思ったけど、俺ついまじまじと見てしまった。あんな格好いい男と友達で見慣れてるなら、守口といても平然と出来るわけだよなって納得した」
「・・・斎とはタイプが違うイケメンだけどね」
「モデルか何か?でもスーツ着てたな」
「サラリーマンよ。保険会社に勤務してる」
へえ、何か勿体無いような気がするな・・・と呟いて、しかも、と続ける。
「俺より背が高かった」
ちょっと悔しそうだったのが笑える。
「あー・・・186センチだったかな、アイツは」
私が言うと、それで更に小顔だなんて怖いものなしだな、なんて変なコメントをしていた。
そんなことを私が彼の晩ご飯を作っている間に話し(楠本は結婚式の招待状を持ってきたんだよと教えると、彼がホッとした顔をしたのを見逃さなかった)、食べた後、今までの説明をして、これからの対応を話し合ったんだった。
そこで、桑谷さんが言ったのだ。
「今日から俺もここに住む」
予想していた言葉だったので、仕方ないから私は頷いた。あーあ、身軽で気軽な独身生活よ、さようなら。
そして、このアパートの郵便受けが見える辺りにカメラを設置すること(無許可だから違法だ)、細川の情報を警察に流すこと(生田刑事だと思う)、私の個人行動の禁止(ムカついた)、護身術の習得(面倒くせー)を宣言していた。