女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~
私の返答にため息をついて、彼は自分の鞄から何かを出した。
「これ」
「何?」
あまり鮮明ではない画像の写真だった。うつってるのは、うちのアパートの1階郵便受けだ。
防犯カメラの映像か、と判った。
男が一人うつっているのが、違う角度で3枚あった。
目を細めてじっと見る。
・・・・・どこかで、この顔・・・・。
写真から顔を上げて目を閉じる。私、この人知っている。
「まり?」
問いかける彼に、待ってと手の平を見せて集中する。
思い出した。そうだ、あの日は暇で、売り上げもなくて、田中さんと話していて―――――竹中さんが、変な客がいるって言った時だ。
・・・・私を、探していたのか。だから売り場をうろうろしていて、目立ったのだ。
そして、見つけた。
3000円のお菓子を買った。・・・・配送で。
「ああ、成る程」
呟いた声は聞き逃してなかったらしい。私から視線を外さないで桑谷さんが指を振って促した。
「配送だったのよ、この男。私が接客した。配送伝票には、売り場の名前も電話番号も入ってる。販売員の名前もね」
彼も頷いた。これで私の名前を知っているわけが判った。