女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~
「それに、熨斗をつけた。上書きはなんだったか忘れたけど、紅白の熨斗。下に名前をいれてって言った。だから名前を確認して―――――」
その時に、フルネームを見たんだった。
細川政也って、確かに書いた、私。
「電話の時、何かが引っかかったのは、名前だったんだ・・・。覚えがある名前だったのか・・」
「・・・どこへの配送だったんだ?」
「そんなこと覚えてるわけないでしょ。半月も前の客の配送」
桑谷さんは肩をすくめた。
ま、それは明日売り場で控え伝票で確認すれば済む話だ。
とりあえず、相手の顔が判った。これで近寄る人近寄る人全てに疑いを持つ必要がなくなった。あの、若く見えた声の小さな男を警戒すればいいのだから。
ようし、思い出したぞ、お前!
私が口元を緩めたのも、しっかり見ていたらしい。
「こら」
と、彼が私の頭に手を置いた。
「・・・何かよからぬことを考えただろう、今」
「ん?」
既に目を細めて不機嫌な顔をしている彼を見上げた。
「・・・私が笑うのは何かを企んでる時なわけ?」
「今の顔は、そう」
するどい。ってか、よく見てる。・・・・とりあえず、逃げよう。