女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~
・・・・・ううう・・・。何てこと。斎のバカ野郎と切れてから、やっと見つけたロマンスなのに。この一番熟れ時の体が勿体無い。
湯船から上がって体と頭を洗う。考える時間が欲しくて、丁寧にゆっくりと洗った。
そして最後の石鹸の泡を流し終わった時、結論が出た。
やっぱり、ストーカー野郎と接触しよう。向こうの望みが知りたい。今のままでは、ヤツの望みが何かが判らない。
湯気で曇った鏡の中の私は、化粧を落とした少し幼い顔だ。
じっと自分を見詰めた。
私の貴重な毎日だ。この1分1秒も全て私のものであるはずだ。なのに、あのロクデナシのせいでそれが削られている。そして大切な男。色々な意味で私を救ってくれた男。私のために、黙って努力している男。
彼を失わないために。
・・・・・私の人生、邪魔させないぜ、ストーカー野郎。
案外、私が狙っていた機会は早くやってきた。
風呂場で決意した2日後、売り場にまた電話があったのだ。
クリスマス商品の展開が始まっており、お歳暮のギフトも開始されていて、百貨店は賑わい始めていた。
ストック場からあふれ出た商品を、繁忙期だけ特別に解放される臨時の倉庫へと竹中さんが運んでくれていて、売り場は私一人だった。
電話が鳴った。
ギフトも始まっているから、ギフトセンターから持ち帰りのお客様もいるので無視するわけにはいかない。