女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~
私は深呼吸をした。そして彼を包んでいるミルク色の風景に向かって、はっきりと声を出した。
「・・・私はあなたが好きだし、必要だし、一緒にいたい。そしてそれは――――――永遠に続く」
・・・はず。と心の中で付け足した。
彼が目を開けて、こっちにやってきた。そして私の前に同じようにあぐらをかいて座る。
11月の朝、海岸の砂浜で二人であぐらをかいて座りこむ。足元は砂だらけで、海の風は冷たかった。髪の毛がバラバラと顔の前で舞い、視界を狭めてしまう。
静かな表情で、不思議な光りを湛えた瞳で、彼は私を見詰める。泣いているのだろうと思った。
彼の目に涙が零れたわけではないけれど。今、心の中で泣いているのだと判った。
私は髪の毛を押さえつけて、体をゆっくりと前に倒し、瞳を閉じた。
そして二人は、塩味のキスをする。
雲の割れ目から、光りがまた、零れ落ちた。