女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~
2、バカ野郎と対峙
12月が直前に迫った百貨店は、活気に満ちていた。
クリスマス商品の展開も始まっているし、売り場は既に真冬モードだ。ただし、店内は暑いので販売員は半袖だったりするんだけれど。
福田店長に12月のシフトについて相談を受けたので、ストーカーはそろそろケリがつきますし、気にせずにそちらの都合でお仕事ください、と答えた。
「そろそろ終わる?どういうこと?」
福田店長は体ごとこっちへと向けて首を傾げる。
「前科がある人間だと判ったんです。警察からも警告を受けたようですし、パトロールも増やしてくれてます」
嘘ではない。ただし、だからストーカーを止めると約束したらしい、というのは嘘だ。警察はそこまではしてくれない。
福田店長は安心したように微笑んだ。
「良かったわ、本当に。年末年始も入るから、桑谷さんと合わせられるか判らなくてどうしようかと思ってたの」
申し訳ない。頭を下げた。
「年末年始、勿論入れますから」
店長の表情が明るくなったのを確認して、休憩に行った。
店員食堂のレンジでお弁当を温めてから、携帯を開く。メールが3件。おや珍しい、と思って読むと、その後ストーカーはどうなったのか、という楠本からのメールと、興奮した弘美からのメールだった。
『楠本に聞いたよ!!あんたストーカーにつけられてるんだって?うちにおいで!!』
・・・・・・楠本め。弘美にちくったな。