これが波留と2人で見た最後の桜だった。


桜の花びらが散り、緑の葉が見え始めて春から夏に季節が変わる頃、波留は自分1人では歩けなくなって車イスで移動するようになった。




鼻につけている酸素チューブも手放せなくなった。



体調が良い日は外での外出が許され、車イスに乗る波留と俺は散歩をした。



「もう…夏終わるね…」



「そうだなぁ…」




「早く秋にならないかな…」



そして、秋から冬になると次第に波留と会話ができなくなった。
毎日書いていた日記も波留は書けなくなり、ずっと寝たままの状態が続き、食事も口からとれなくなった。
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