祓い屋!
日が過ぎ

また少年は、私の元に来た

傷はなく、どことなくすっきりした様子

「おねえさん、この前はありがとう」

私はただ微笑んだ

「おねぇさんの名前は?おれは本郷籐次郎」

「名前なんてないわ…」

本郷…

なるほど祓い屋の子か

力の弱く梅の木を宿りにして

この地にいても本郷の名は知ってる

会ったのは初めてだ

「名前がないと不便でしょ?梅だから…そうだ小梅ってどう?おれこれからそう呼ぶよ」

勝手に名を決め

満足した少年…籐次郎は

その後も度々来ては

私に話し掛けたり

陣を描いては失敗し

術を試みては、力尽きている

どうしようもない奴だった

でも、私はそんな様子を見るたびに

なんともいえない気持ちで

嬉しかった
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