カタブツ上司に愛された結果報告書
通り過ぎる人達は、みんな一瞬私を見ていく。
声を掛けてくれる人などおらず、それが惨めに思えてならない。


最悪。足は痛いしカッコ悪いし。

痛くても誰も手を差し伸べてくれない。けれど、これが現実の世界なんだよ。

私だってそうじゃない。
困っている人がいても、なかなか声を掛ける勇気が出なかった。いつも迷って勇気を出せないことばかり。


けれど田中さんは違った。

2年前私がウジウジ悩んでいる間に、すぐに動いておばあさんを助けちゃって。私が迷って声を掛けられずにいることにも気づいてくれた。


人として困った人がいたら助ける。
そんな当たり前のことが出来ないのが普通なのに、それをいとも簡単にやってのけてしまう人。


そんな人、なかなかいないよ。今の現状がそれを証明しているようなものだ。


だからこそ失いたくない。田中さんの隣にずっといたいのに、現実はうまくいかないな。

一緒にいたいと思うほど、苦しくなるばかりなのだから。


いつまでも歩道に座り込んでいるわけにもいかず、どうにか力を振り絞って立ち上がった。
けれど予想以上に足は痛く、普通に歩くことができない。


家に帰ったら湿布貼らないと。


田中さんへの想いを募らせながら、この日はタクシーを拾い家路に着いた。
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