カタブツ上司に愛された結果報告書
それに仕事は? まだ就業時間中だしなにより今日は大切なプレゼンの日でしょ? それなのにどうしてここに――?

なんで私が入院していることも知っているの?


次から次へと疑問が増す中、彼は眼鏡のグリップを上げ深く息を吐いた。


静かな室内にそれは大きく響き、身体が過剰に反応してしまう。


ビクッと怯えてしまうもちらりと彼を見ると、鋭い視線を向けられていて怯んでしまった。


「なぜ入院されたこと、連絡下さらなかったのですか?」


いつもの淡々とした口調ではなく、怒りを含んだ声にますます怯んでしまう。


「え、それは……」

「聞いて耳を疑いました」

「……すみません」


気分はすっかり叱られている子供だ。


感情の読めないはずの人なのに、今日ばかりは嫌でも分かってしまう。

田中さんは今、ものすごく怒っていると。


それが分かっているからこそ咄嗟に謝ってしまったけれど、田中さんはまた大きな溜息を漏らした。


「すみません、声を荒げてしまい。……どうしても許せなくて」


そう言うと田中さんはしっかりと私の手を握ってきた。

「え、あの田中さん!?」
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