カタブツ上司に愛された結果報告書
「なんですか、その反応は。私は他人に甘えない人間だと思っているのですか?」

「えっ! いえ、そのそういうわけでは……」


正直そう思っておりました。
だって田中さん、大人だし。いつもテキパキ動けて隙がないし、しっかりしているし完璧だし。


そんな田中さんが私に甘えるだなんて……! それを想像しただけで悶えてしまいそうなんですけど!


しばし妄想の世界に入っていると、田中さんはまた笑い出した。


そして真っ直ぐ私を見据え、蕩けてしまうんじゃないかってくらい甘い顔で囁いたんだ。


「やっと素のあなたが知れて嬉しいです。……今の方が充分魅力的ですよ」


なっ……!! なんですかその殺し文句は!!


絶句してしまい口をパクパクしちゃっていると、ますます田中さんは笑いを増すばかり。


「それにしても、どうして灯里さんのことでヤキモチを? 美海もご存知だったでしょう? 灯里さんには婚約者がおり、近々結婚間近だということを」


「それはそうですけど……その、田中さんの灯里ちゃんを見る目があまりに優しくて。それに聞いちゃったんです。……田中さんは以前、報われない相手をずっと想っていたと」


「報われない相手、ですか?」
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