カタブツ上司に愛された結果報告書
「それはそのっ……! こんな状況でそういうことを言うことがです!!」


頬を押さえられ視線を合わせられた状況で、私はやけくそ気味に言ってしまう。


「それは失礼しました。ではこれならいいですか?」


頬に触れていた手は背中に回り、再び田中さんの胸の中に閉じ込められてしまう。


「これなら先ほどのようなセリフを言っても、大丈夫でしょう」


いえいえ! そんなことありませんから! むしろ逆効果です!!

田中さんに抱きしめられている状況で、ドキドキしないわけがないじゃない。でも――。


緊張よりも、嬉しいって気持ちの方が勝ってしまっている。
こうやって田中さんに抱きしめられていると、ずっと抱きしめていて欲しいと願ってしまうほど。


田中さんの大きな手が、私の背中や髪に優しく触れるたびに緊張が解れていき、気づけば自ら田中さんの大きな背中に腕を回していた。


より一層密着する身体に、胸がキュンと鳴ってしまう。


「美海……」


愛しそうに私の名前を呼ぶ彼の声に、心臓が飛び跳ねる。


本当にこのまま時間が止まってしまえばいいのに。
幸せな時間ほど長く永遠に続いて欲しいと、切に願ってしまう。
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