カタブツ上司に愛された結果報告書
会社でふたりのやり取りを見るたびに、代表と田中さんの間には強い絆みたいなものがあると信じて疑っていなかったんだけど……もしかして違ったのかな?


散々目の前で田中さんをけなしていく代表を見ていたら、そう思えてならない。

そんなときだった。物音立てずに、静かにドアが開いたのは。


「……代表のお気持ちは、大変よく伝わりました」

「ひっ!? なっ、田中っ……いつの間にっ!?」


飲み物が入ったビニール袋を片手に突然現れた田中さんに、代表は悲鳴にも似た声を上げ椅子から立ち上がった。


そんな代表には目もくれず、スタスタと病室内に入ってくる田中さん。

そしてそのまま先ほどまで代表が座っていた椅子に腰かけ、ビニール袋の中からカフェオレを取り、私に差し出した。


「以前カフェで飲んでいたのでお好きなのかと思ったのですが、こちらでよかったですか?」


やだ、田中さんってば覚えてくれていたんだ。

些細なことでこんなにも嬉しくなれちゃうのだから、私ってばつくづく単純な性格をしていると思う。


「ありがとうございます」
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