カタブツ上司に愛された結果報告書
まるで立場が逆転したかのようなやり取りに、呆気にとられてしまう。

田中さんにはさすがの代表も言い負かされてしまうようだ。

唇を噛みしめ、声にならないのか悔しさを爆発させるように、その場で足を踏みつける姿はまるで子供のようだ。

その姿を傍観者の如く見つめてしまっていると、涙目が私に向けられた。


「滑川さん! 本当にコイツでいいのか!? こんな冷たくて屁理屈ばかり言う奴と一緒にいたって、いいことなんてひとつもないぞ!」

「いいえ、その……」


ズカズカと歩を進め私の目の前まで来ると、ズズッと鼻を啜り訴えるように話し出した。


「口うるさい小姑のようだし、俺には容赦ないし。……だけどまぁ、根はいい奴なんだ。田中がいないと俺は仕事ができない。だからこそ、こいつのこと支えてやってくれ」


代表……。


さっきまで散々悪態をついていたというのに。


でもやっぱり代表と田中さんは、強い絆で結ばれているんだよね。

悪態がつけるのも、信用しているからこそでしょ? そしてこうやって私にお願いして来たのも、田中さんのことを大切に思っているからこそだ。


今は違った意味で涙目の代表に大きく頷いた。

「もちろんです」
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