カタブツ上司に愛された結果報告書
流れに身を任せるかの如く尋ねると、すぐに答えが返ってきた。


「もちろんです」と――。


少しだけ照れ臭そうに眼鏡のグリップを上げる姿に、胸がキュンと鳴ってしまう。


なっ、なんですか田中さん! その絶妙な照れは!!
そのくせまたいつものように感情の読めない顔をしているのに、ほんのり照れるとか反則です!


ひとりぶるぶると悶えていると、田中さんはわざとらしく咳払いをし、スーツの胸ポケットから綺麗に折りたたまれた紙を取り出し差し出してきた。


「これを」

「……これは?」


突然差し出された紙に頭の中でハテナマークを沢山並べ、田中さんと差し出された紙を交互に何度も見つめてしまう。


「ずっとお渡ししようと思っていたのですが、なかなかタイミングが掴めずでして。私の連絡先を記してあります」

「連絡先、ですか?」

「えぇ、それと注意事項を何点か提示させていただいております」


紙へ向かっていた手は途中で止まってしまう。
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