カタブツ上司に愛された結果報告書
大きな勘違いだった。

田中さんはロボット人間なんかじゃない。だって灯里ちゃんの前では、あんなに笑っていた。優しい顔して、誰でも分かるくらい嬉しそうに話していたもの。

ふと三日前に灯里ちゃんが言っていた話が頭をよぎる。



『当時田中さんには好きな人がいたらしいんだけど、どうも報われない相手だって言っていたらしいよ』



田中さんが代表に話していた報われない相手って、もしかして灯里ちゃん……?


足は止まり軽くよろけてしまうも、どうにか壁に手をつき身体を支えた。


そう、だよね。
そう思えば思うほど辻褄が合う気がする。


田中さんにとって灯里ちゃんは、報われない相手だよね? 代表の妹って立場だし。

いつから灯里ちゃんに婚約者がいたのか定かではないけれど、相手がいるんだもの、田中さんの気持ちは報われない。


なにより灯里ちゃんを見る田中さんの眼差しがそれを物語っている。

あんな顔、きっと灯里ちゃんにしか見せない顔だよ――……。
< 95 / 163 >

この作品をシェア

pagetop