The Little Red Story
「こんなところにいらっしゃったのですね」



そう言って彼は一つ、小さなため息を漏らした。



シエラ専属の執事であり、とても心配性な彼のことだからシエラを必死で探していたのだろう。



そう思うと、シエラはいたたまれない気持ちになった。



「ごめんなさい、ジーク。そんな事より、ちょっと旅の準備をお願いできないかしら」



その言葉を受けてジークは瞳に驚嘆の色を含んだ。



「急にお出かけになるなど……一体どこへ行かれるのですか?」



ジークは厚い眼鏡をぐいっと上げ、シエラの顔を覗き込んだ。



「森が私を呼んでいる……私は森に呼ばれているの」



そう言うや否やジークの顔つきは険しいものとなった。
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