短編集『明日になったら死ぬほど面白いコメディ思いつくかもしれない。』
森の奥の小さなケーキ屋さん。(2)
森の奥には、小さなケーキ屋さんがあったのです。
あまり人には知られていません。
斎藤は、苦しみと悲しみにのた打ち、苦しんでいたのです。
斎藤は、絶望の崖っぷちに、立たされていたのです。
斎藤は、小さな木の戸をくぐりました。
茶色いウサギがエプロンをつけ、忙しそうです。
彼は、針金のような、丸いメガネをしていました。
斎藤は、「ケーキをひとつ、」とお願いしました。
「なんにします?たくさんあるよ」
ウサギは、こちらを見ずに、持ち帰り用のケーキの、箱を折っていました。こぜわしそうです。
「じゃあ、この、チョコのロールケーキみたいなやつをーー」
ウサギは、ジロリとこちらを睨みました。
「わわ、なんだい」
斎藤はウサギといえど、少し怯み(ひるみ)ました。
「お客さん、お目が高いよ。今日一番の自信作。そちら」
「そうなんだ。」
「待ってて。今だす」
ウサギは、少しかがむと、銀色のケーキサーバーで、うまいこと、チョコロールケーキを、一切れ、掬いだしました。