旋律の百物語
「ただいまー…。あぁ、疲れた……」
 
 
重たい買い物袋を玄関に勢いよく置き、そのまま床に滑り込む。
 
リビングから流れる冷たい風が心地よい。
 
 
「ちょっと由実ー!牛乳とかも入ってるんだから、早く冷蔵庫入れないと腐っちゃうでしょ!」
 
 
台所からエプロンを着た母の幸江は、うなだれる由実に言った。

 
「だってー!外暑いしー」
 
 
「だってじゃないでしょ!早く入れないと…。あーあ、卵が一個潰れてるじゃない…」
 
 
幸江は由実に背を向けて、そそくさと台所に戻った。
 
 
(なんでお礼すら言ってくれないのよー…)
 
 
盛大にため息を吐き、由実はようやく体を起こした。
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