The price of life
「さぁ、行きなさい。私はここで最後まであなたを見届けているわ。生きていればまた会いましょう。坊や」
魔法使いの女性の視線を背中に感じながらカインは暗く、細い通路を振り向くことなく、1人歩いていく。カインの靴音だけが通路内に響き渡る。遠くに見える光が次第に大きくなっていく。
 カインは鉄格子の前まで来ると目を瞑り、大きく深呼吸をした。瞼の裏にはマリアの、あのひまわりのように眩しい笑顔が映し出される。
鉄格子の開く音が響き渡ると、カインはゆっくりと目を開けた。そして、1歩1歩踏みしめながら歩を進める。観客席からの歓声が耳障りに感じるほどにカインの耳を刺激する。
「皆様、大変長らくお待たせいたしました!!お互い愛し合い、結婚の約束までした恋人がまさかの対戦相手!そして、目の前で死なれるという悲劇を乗り越え、今カイン選手の入場です!!」
アモスのしらじらしいセリフがカインの勘に障る。己の感情をぐっと抑え、会場の中央まで歩を進める。
「そして、カイン選手の今回の対戦相手は同じレセーナ村出身であり、カイン選手の唯一のご友人でもある――」
「う、嘘、だろ……」
「ダニエル選手です!!」
右側の鉄格子がゆっくりと開き、暗闇の中からダニエルが現れ、カインにゆっくり近づく。俯き、表情は暗い。右手には剣を持っている。驚きを隠せず、思わずダニエルの元へ駆け寄るカイン。
「ダニエル!!お前、ダニエルじゃないか!!無事だったのか!?」
「カイン。俺はお前に謝らなければならない……」
「どうした?一体何があったんだ!?」
「全部、全部俺のせいなんだ……!!」
カインの目の前で泣き崩れるダニエル。ダニエルの肩を持ち、心配そうに見つめるカイン。
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