The price of life
「どういうことなんだ!?説明してくれ!!」
「あの日、いつものように都まで母さんの薬を貰いに行ってたんだ。その帰り道に赤いローブを着た女に話しかけられたんだ」
「あいつか……!」
「その女に言われたんだ。"私の魔法でならお前の母さんを治してあげられる。でも、治すには条件がある"って」
「条件……?」
「あぁ。"お前の身体を1日私に貸せ"って。"そうすれば、お前の母の病気を治してやる"って。俺も1日くらいなら、と思って、軽い気持ちで承諾したんだ。本当にそんなことできるとも思えなかったし。でも、まさかこんなことになるなんて……」
「おばさんは無事なのか?」
「分からない……。身体を貸している間の記憶がないんだ。気が付いたら牢屋に入れられてて……」
「そうか……」
「マリアちゃんのことは聞いたよ。カイン、お前には本当にすまないと思ってる。許してくれとは言わない。でも……でも、俺は母さんの為にも、ここで死ぬわけにはいかないんだ……!」
「ダニエル……?」
立ち上がり、剣を構えるダニエル。
「剣を抜け!カイン!!俺と、俺と勝負しろ……!!俺と戦え!カイン!!」
狂気の混じった歓声の中、2回戦のゴングが鳴らされようとしていた。その時カインは混迷の中にいた。ダニエルの眼は真っ直ぐカインを捉えている。瞳の奥に覚悟を秘めながら――。
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