The price of life
「――い。おい。おい、起きろ」
 野太い声に叩き起こされ目を覚ますと、そこはどこかの牢屋の中だった。独居房のようだ。周りは石壁に包まれ、扉は鉄格子で固く閉じられている。その前には布の覆面をかぶった大男が立っている。手には斧の一種である"バルディッシュ"と、カインの剣がしっかりと握られている。覆面の隙間から覗く眼光は鋭く、殺気に満ち溢れているように見えた。
「出ろ」
カインが質問する間もなく牢屋から出され、自身の武器を返される。
「ここはどこなんだ!?マリアは無事なのか!?答えろ!!」
大男に剣を向けるカイン。その手は少し震えているようにも見える。対する大男は悠然と立ち、その鋭い眼光で真っ直ぐカインを見つめている。
「貴様をここで殺すことは蟻を潰すより容易なこと。しかし、それでは"あの方"の意に反する」
「あの方?」
「答えを知りたくばこの先へ進むことだ。貴様の質問の答えはそこにある」
「お前の言葉を信じろと?」
「信じる信じないは貴様の勝手だ。それとも、ここで俺と一戦交えて犬死するか?」
二人の間に重い沈黙が流れる。時間にして数秒だが、重く、とてつもなく長い数秒だ。空気が一瞬にして張り詰める。大男の殺気がカインへ向けられる。
「分かった。言うとおりにしよう」
そう言うと、カインは剣を収めた。とても今の自分の実力ではこの大男に勝てる自信がなかったのだ。それに、この男の言葉がもし本当なら、この先にマリアがいるということになる。マリアと会うまでは絶対に死ねなかった。
「賢明な判断だな。では、この先を真っ直ぐ歩け。妙な真似をしたら……分かるな?」
石壁に包まれた、狭く、暗い一本道だ。カインは大男に言われるがまま、その道を歩き続けた。後ろからは大男が殺気を放ちながらついてくる。二人の足音が壁に反響して響き渡る。しばらく歩くと、遠くの方に白い光が見え始め、二人が近づくにつれ、その光は次第に大きさを増していった。光の手前までくると、大男は立ち止った。大勢の人の声が上の方から聞こえる。
「ここからは一人で行け」
「この先に何があるんだ?」
「行けば分かる」
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