bitter days
あれからずっと立花に話しかけるのに無視をされ続けて、立花の本音を聞くことは出来なかった。
立花は完全にクラスの中から浮いていて、そのまま卒業式を迎えた。
卒業式では「ボタンください」「校章ください」とかいろいろ詰め寄られたけど、全部突っぱねた。
あれ以来、女の子との関わりがますます面倒になったから。
仁と一緒に家路に着こうとした時、向こうから立花が歩いてくるのが見えた。正直、傷は癒えてなくて。立花を見ただけで身体が緊張するのが分かった。でも、もうずっと無視されるから、なんとか平静を装って、ただ通りすぎようとした時、
「ごめんね。」
すごく小さい声だったけど、立花がそう言うのが聞こえた。
俺はばっと後ろを振り返ったが、立花は一度もこちらを振り向かずに歩いていく。
立花はあの頃よりも髪が伸びていて、歩く度に揺れる長い黒髪がとても綺麗だった。
約束を破った俺が悪かったのか。でも、俺は、あそこで付き合ってないって言う選択肢はなかった。
立花、俺の方こそ、ごめんな。
そう心の中で呟いて、家路に着いた。
恋愛なんて、苦すぎる。そう思えた、15歳、春。