bitter days
「いやー今日もすごいね、高橋くん人気。」
「ほんとにねー。」
2人で頬杖をつきながら教室のドアから見える廊下に目をやると、1年の王子様と陰で呼ばれている高橋 修也くんが男友達と廊下で立ち話しているところだった。
王子様っていうようなキラキラした雰囲気をまとっているわけでもないのに関わらず、この異名を持つことになったのは、彼の並外れたルックスと、頭脳明晰、そしてサッカー部所属と言う、華々しいステータスを持っているからだろう。
こんなに条件が揃っている人なんて、なかなかいない。
ま、あたしとしてはどうでもいいけどね。だって、あんな人と付き合ったら絶対学校で生きていけないし。
ハイエナのような女子どもにぶっ潰されちゃう。
それに、なんか匂うのよね。
あんなにイケメンなのに、浮いた話一つないなんて。大抵、と、くくっていいか分からないけど、今まで恋愛に興味なかったけど高校で素敵な子と巡り合えて学校公認のカップルになる、とかになるじゃない。(決して郁の勧めで読み始めた少女漫画の影響とかではない)
でも入学してから数ヶ月経つのに、全然そんな話が聞こえてこない。
これってさ、訳あり物件な気がするのよね。よく考えなきゃただ硬派なだけで素敵!になるかもしれないけど、あのばっさり女の子を切っていく感じ。ただ硬派な訳じゃなさそう。
私は悶々と構想を繰り広げていたが、高橋くんが移動すると同時にそれをぱっとやめて、郁の方に向き直った。
「今日は部活後予定ある?」
「特にないよー。」
「じゃあ今日は金曜だし、駅前寄ってく?」
「賛成ー!」