bitter days
私は郁へ作成していた気の抜けた場違いなメッセージをすぐさま削除した。
周りから「郁ちゃん大丈夫かな?」とか「片山可哀想だよな・・・」なんて声が聞こえてくるけど、私は何も考えられないし、何も言えなかった。
親を亡くした経験のない私がどんな言葉を伝えても、郁には何も響かないって分かってたから。
それに、郁がどんなに頑張って家事をしていたのか、どんなにお母さんが好きだったのかも知っていたから。
ご飯を食べている時とか、買い物をしている時とか、ふとした時にお母さんの話をしてくれた。
とても優しくて、いいお母さんなんだなってのがすごく伝わってきたし、だから余計に今回のことは郁にとって、相当きついなんて言葉では表せないものだと思う。
でも仲のいい友達が悲しんでいると分かっていて何も出来ないのは、辛くて。
私は郁のために授業の内容を全部ルーズリーフにまとめた。普段は聞き流す先生のうんちくなんかも全部。
郁が授業を受けているような気分になれるように、吹き出しなんかつけてみたりしてみた。
あと、連絡するのを我慢した。