bitter days
忌引明けの月曜日。私はいつも通り学校に向かっていた。本当はいつもよりも早く登校して郁が来るのを待っていようかななんて考えていたんだけれど、そうすると気を使われていると思うかなと思って、いつも通りにすることにした。
教室のドアに近づくと、ガヤガヤと騒がしい声がする。これはもしかしたら、最悪なパターンかも。
ドアをガラリと開けると、目の前の郁の席にはたくさんの人がいて、郁を取り囲んでいた。やっぱり、予想通りな展開になっている。勘弁してよ。
みんな「大丈夫?」なんていろいろ声をかけていて、私はその中にぐいと割り込み、後ろから郁の腕を掴んだ。
「うわっ。誰かと思えば奈美じゃん。びっくりしたー」
「郁ー、ちょっと聞いて欲しいことあってさー。こっち来てくれる?」
私は郁の腕を掴んだまま教室を後にして、廊下の隅まで移動した。
「奈美、ありがとう。助けてくれたんでしょ?」
郁はほっとしたような顔を私に向けてきた。私が取った行動が正しかったみたいでふうと一つ、ため息をついた。
「私だったら、あんなのうざいからああしただけ。
てかさ、郁がいない間、私めちゃくちゃ優等生だったから。」
「え?何?どういうこと?」
カバンの中から郁用のルーズリーフを取り出して見せると、郁の顔が驚きに変わった。
「なにこれ、すごいんだけど!
てか、似顔絵のセンスやばすぎ。」
「え?私的にはかなりいけてるつもりなんだけど。酷くない?」
私が書いた数学教師の似顔絵を見ながら爆笑し合った。お腹が痛くなるまで笑って、そのまま教室に戻ると、みんな散り散りになっていて、いつも通りHRまでの時間を過ごすことが出来た。