bitter days
「次どのブース見に行く?」
「やっぱりここは外せないから、ここかな~」
黒づくめの人で溢れかえった会場。こんなにスーツの人たちでごった返すなんて、この就職の祭典、合同企業説明会ぐらいだろう。
やる気があり、説明を聞いている最中に必死にメモを取っている人。特に質問もせず、目についたところにふらりと話を聞きに行く人。私は、どちらかといえば、後者だ。
大学3年ということで、考えるまでもなく就職をしなければと、みんなと同じように合同企業説明会に参加した。院に行くという選択肢があればまた違うんだろうけど。残念ながら完全に学部卒業がメインの学科に進むあたしが院に進む選択肢は初めからほぼなかった。
だから大学3年の今、流れに乗るように就職活動を始めた。かと言って、特にやりたいことがあるわけでもなくて。
この分野は興味がある、この分野はないな、くらいでしか考えていない私にとって、この合同企業説明会で会う見知らぬ学生達は刺激的だった。
まだまだ学生気分が抜けず、これといって社会人に対して理想も幻想も抱いていない自分が就職活動をする上で今一番苦労しているのは、モチベーションの保ち方だった。
大学は自分の学科で必要な単位さえ取れれば好きなように授業を組むことが出来る。それに基本的に受け身でいればいい。少人数で受ける講義はまた違ったりはするけど。でも、自由なやり方にすっかり染まってしまい、自由気ままに大学生活を過ごしていた私にとっては勘弁してほしいことだった。