bitter days
「はあ。」
トイレに向かい、洗面台に手をついてため息を一つ吐く。それだけで少しは胸のつかえが取れた気がした。
この独特の雰囲気は初めて味わうもので、疲れるな、と人並みのことを感じた。
一応身だしなみのチェックくらいはするか。
目の前にある鏡を見上げた時、鏡越しに見慣れた顔と目が合った。
「奈美!」
「郁!まさかトイレで会うなんて。」
お互い顔を見合わせてぷっと吹き出す。奈美の顔を見て、やっと肩の力が抜けた。そうか、柄にもなく緊張してたのか。
奈美が用を足すのをトイレの外で待っていると、終わったのかハンカチで手を拭きながらトイレから出てきた。
「とりあえずちょっと休憩しない?」
「めちゃくちゃ賛成。」
2人で企業のブースから離れた場所に設置してある簡易休憩スペースに向かい、どさりと椅子に腰かけた。