bitter days
「はあー疲れたー」
「ほんとに。私なんてあと2つ見たら帰ろうかと思ってたとこよ。
でも郁に会えてちょっと体力回復したわ。」
「こんなに広い会場でよく会えたよね、しかもトイレで。」
また2人で顔を見合わせて笑い合う。こうやっていると本当に落ち着く。
私と奈美はバラバラの大学になってしまったから会う回数は少ないけれど、2人とも都内の大学でそんなに離れていないこともあって、今日のような合同企業説明会の会場も同じところに割り当てられたのだろう。
「郁は何系見てたの?」
「んーとりあえず興味ない分野以外適当に見てる。」
「なんか郁、適当さに拍車がかかったね。」
「だってさ、特にやりたいことなんてないんだもん。」
「まあねえ。あたしも和馬の影響がなければ絶対そうなってた。」
「でたよ奈美の珍しいのろけ~」
私の指摘に真っ赤になる奈美。こんな奈美を高校の頃は見ることが出来なかった。今まではかなり恋愛に対して淡泊だった奈美が、大学1年の時に出会った5歳上の彼には全然違って、こんな風に不意にのろけることがある。本人はのろけてるつもりはないんだろうけどね。
大学院を卒業した彼の話を聞く限り、大人だなあとすごく感じる。自分が院生と出会うことが全くないだけに余計すごく大人なんだろうなと勝手に想像してしまう。
顔を赤くして頬図絵をついてそっぽを向く奈美。
かわいくて、いいな。