bitter days




慎の目を見つめながら、あたしは恐る恐る口を開く。今まで、別れるのにここまで緊張したことがあったかな。


「正直、遠距離になるって聞いて、無理かなって思った。
連絡も自分からマメに出来る自信もない。」



思い切って正直に話して、尚も慎の目を見続ける。あたしが悪いのは分かってはいるけれど、これがあたしなんだもん。しょうがないじゃない。




しばらくすると、慎の方から目を逸らした。


「・・・分かったよ。

なあ、郁ってさ、俺のこと本当に好きだった?」



あたしは慎の問いかけにすぐに「うん」と答えることが出来なかった。すぐに答えられないことこそが、あたしの答えだ。別れるときになって気づく。




ああ、あたしはまた本気になれていなかった。











「・・・ごめん、やっぱ今のなし。これは聞かないでおこうって思ってたのになあ。」



そう嘆いた後にふっと真剣な顔になったかと思うと、力強い腕でぐいと引っ張られ、あたしは慎の腕の中に包まれた。





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