bitter days
今まで別れ話をしていてこんなことをされたことがなくて、柄にもなく慌てふためいた。
「ちょ、慎!?」
あたしの講義もおかまいなしに抱きしめた腕に力を込め続ける慎。あたしが腕にどんなに力を入れても男の人に敵うはずがなくて、抵抗するのを諦めて大人しく慎の腕の中におさまることにした。
「・・・なあ、最後に一回、いい?」
え?と思った時には部屋の床に敷いてあるラグが背中に当たって。慎が上に覆いかぶさって無理矢理キスしてきた。手はあたしの大事なところをいつもよりも力強く撫でまわしていて、
「いや!やめて!」
思わずなぜか空いていた手で慎の顔を引っ叩いた。慎はあたしの本気の抵抗を見るとすっと上からどいて、部屋の窓際に歩いて行った。
まだドキドキと鼓動が治まらないあたしは慎の行動を目だけで追うと、慎は窓をガラリと開けて、ポケットからタバコを取り出して一本口に咥えた。
え?慎ってタバコ吸ってたの?
手つきを見てみるとすごく慣れていて、最近吸い始めたというわけではなさそうだった。
ふうと一筋煙を吐き出すとくるりと顔をこちらに向けた。
それだけでびくつくあたしを見て苦い顔をする慎。その顔から、さっきのことを悔いているか、本気でするつもりはなかったことが分かった。