bitter days

それが分かるとさっきまでの恐怖がすっと消えて、やっと起き上がることが出来た。とは言っても、あたしから慎のところに行くことは出来ない。

少し距離をあけた状態のまま、慎が口を開く。



「タバコ吸ってんの、知らなかっただろ。」



「・・・うん。」



話をしながらもタバコを吸う手は休めずに、美味しそうに吸っている。こんな時に美味しそうなんて表現、間違っているかもしれないけれど。



「郁嫌かなと思って、郁の前では吸わないようにしてたんだよ。俺ら急に会ったりすることもなかったし、隠すのは簡単だったよ。」



「・・・そうだったんだ。」



慎の気遣いとあたしたちの付き合い方を慎の口から聞いて、なんとなく理解する。暗に淡泊だったんだって言われてるのかなって。




「さっきは、悪かった。
数分前まで付き合ってたのにこんなに拒まれて、郁の気持ち分かったし、吹っ切れたわ。



でもさ、郁はどうしたいの？本気で誰かと付き合いたいと思ってるの？」




吸い終わった吸殻を携帯灰皿にしまいながら、射るような視線をあたしに向ける。
視線もだけど、慎の言葉の方があたしには刺さった。