bitter days




「「かんぱーい!」」


がちゃんとグラス同士がぶつかる音があちこちで聞こえてくる。いかにも学生が使いそうな居酒屋で、小汚くて狭いところだ。

はあ、正直、面倒なことに巻き込まれたなあ。




「斉藤先輩!橘さん連れてきてくれて、助かりましたよ~。
もう女子がうるさくって。」



「えーどの人どの人?あたし院生の先輩と仲良くなりたい!」



多分学部生だろう、まだ幼い顔立ちをしている子が、斉藤の後輩に詰め寄っている。
しょうがないなあ。


「えっと、橘 和馬って言います。よろしく。」



「あー・・・よろしくお願いします!」


一応にこりと微笑むことも忘れなかったけど、女の子は俺にペコペコと頭を下げて自分の席へと帰って行った。
どうせこんな反応だって、分かってたよ。


俺は平々凡々の顔だから、こうやって完全に出会いを求めている紹介とかでいい反応をされたことがない。

顔だけ見て決めつけるとか、本当に失礼だよね。




まあ、いいけどね。




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