私、あなたを呪ってマス! ~こちびOLと凶悪な先輩、芹沢彰人の日常~
 そういえば、といきなり耳を引っ張られる。

「お前、彰人とキスしたらしいな」
「罰ゲームですよっ」

 しかも、私のじゃなくて、芹沢さんのっ、と訴える。

 だが、菅野は鼻で笑って言った。

「それでもう、彰人にメロメロか。
 お前も意外にチョロいな」
と。

「違いますよっ。
 私は、芹沢彰人を……っ」

 恨んで、奴の弱点を探ろうとしてるんです、と彼の同期に言うのはさすがにどうかな、と思い、踏みとどまった。

 ふーん、と菅野は冷ややかに見たあとで、
「まあ、せいぜい、頑張れよ」
と肩を叩いて行こうとする。

「ちがっ、違いますよっ、班長っ!」
と思わず叫ぶと、近くを通っていた男性社員が、班長? と菅野を振り返っていた。

 うちにはそんな役職ないからだ。

 このボケが、という顔で菅野はこちらを見ていた。

 それにしても、この男、見る目がないな、と小春は腕を組んで、彼を見送る。

 この私が芹沢彰人にメロメロだなんて。

 こんなにも呪っているのに――。



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