私、あなたを呪ってマス! ~こちびOLと凶悪な先輩、芹沢彰人の日常~
 


「小春ー、仕事終わりそう?」

 夕方、まだ、パソコンの画面を見ていた小春の許に麻里奈がやってきて、そう訊いてきた。

「うーん。
 もうちょっと。

 ……一円合わないんだよなあ」
と呟くと、

「じゃあさあ。
 それ、終わったらおいでよ。

 このフロアの同期でご飯食べに行こうって言ってるから」
と言われた。

 了解ー、と振り返らずに手を振る。

 しかし、なかなかそのたった一円が合わず、みんなで食事に行くどころか、かなり手間取ってしまった。

「酒井ー。
 終わったかー」

 部下を置いて帰るわけにも行かず、待っていてくれた仲間課長がデスクから訊いてきた。

「終わりましたー。
 すみませんでした」

 前任者の入力ミスに気づかず三時間。
 軽く自分を殴りたい。

 四人の子持ちの仲間は、いつも一番下の娘さんをお風呂に入れていると聞いていたのに、本当に申し訳ないと、ぺこぺこ詫びる。

「ぜひ、奥様にもお詫びを」

「……やめろ、何処の愛人からの嫌味の電話かと思われるから」
とつれないことを言い、気をつけて帰れよ、と言いかけた仲間は気づいたように、廊下を見て笑う。

「お、芹沢が居るじゃないか。
 お前、送って帰ってもらえよ」
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